20120913みのもんたの朝ズバッ石原伸晃「安全な原発は再稼動」
はじめに-安全な原発は作れない
以下に化学プラント技術者の目から見た原子力発電所および使用済み核燃料再処理設備など、原子力プラントの問題点を整理してみる。
(1) 新設プラントの設計・建設時
プラントは一品料理で作るものであって、欠陥のないものを一発でできるわけがない。
工業製品には毎年改良型が出るのは周知の通り。
毎年何百万台と生産している自動車だって、ときにはリコールが必要になる。
(2) 定期点検修理
石油プラント・化学プラントでは、毎年または2年に一度の点検修理で、気がついた不具合箇所を徹底的に直しなおししながら、30年~40年間運転している。
設計変更して作り直す部分もあるし、腐食や減耗しているものもある。したがって、配管を切り取り更新するとか、機器に修正を加えるなどは、当然の行為である。
(3) 原子力プラントの場合
一度、核分裂反応を行わせたプラントには危なくて近づけない。近づいたとしても一時間とか一五分とかの時間制限がある。
不具合箇所があって、設計変更や部品交換が必要な個所を突き止めるには、設計のリーダーや施工のリーダーが、不具合箇所を目で見、聴音し、撫でたり摩ったり、ノギスで測ったり、考えたりして、装置に肉体を接触させながら長時間放射能汚染区域で試行錯誤しなければならない。
ところが、繰り返しその場に立ち会う必要のあるベテランは長時間現場に立つことができない。そうすると、もっとも現場に身近に接触できる者は消耗品的に交代可能な労働者ということになる。
ベテランは、指図するだけで、素人に毛の生えた労働者に「見てこい」と言って、その結果を鵜呑みにするしかない。
(4) 普通の手順も実行できない
福島第一原発の汚染水が、「原子炉建屋の地下室に溜まっているらしい」と推測されるようになってから、現場では作業員に「水位がどこまで来ているか見てこい」といったというニュースがあった。イの一番に判断者が自分の目で確かめるという行為がなされないのであれば、それ以降の作業の確度は、信頼性が低いものにしかならない。
6月下旬に放射能汚染水の浄化フィルターを繋げて運転したら、バルブのひとつを間違って開けていた、というニュースがあった。それは、作業員が間違った表示をしたからだと。われわれが石油プラントや化学プラントを建設して運転を始める時にはラインチェックを行う。第一回は建設側設計責任者が行い、第二回は運転責任者が行う。その上で、実液を流し始める。作業員は間違うのは当たり前だし、時には設計者だって間違うという前提のもとに二重三重のチェックを行う。放射線被ばく制限時間のために、そのような手続きを取ることができないプラントというのは、最初から間違いが起こるものと認識してかからなければならない。
(5) 完結しないプロセス
今回、福島第一原発の作業環境を劣悪化している要因のひとつは、原発建屋内の使用済み核燃料プールに使用済み核燃料を保管し続けていることである。これは、使用済み核燃料を搬出するルートができていなくて、核ゴミを排出できないからである。トイレのないマンションと言われて久しいが、用済み危険物を運転現場に放置しているなどというのは、日ごろ作業環境の「整理整頓」「安全第一」をモットーにしているプラント業界から見れば、信じられない危険行為である。
原発のバックエンド費用(使用済み核燃料の後始末や、原発の解体の費用)が、現行の日本の原発の核廃棄物を合計すれば七〇兆円であるという識者の計算を見るにつけ、技術的にも経済的にも無理なプラントと言える(注1)。
(6) 外国の例
原発推進派の言葉は「スエーデンだって原発があるではないか」であるが、スエーデンでは「やるなら発電企業の責任でやりなさい」という態度である。日本みたいに、国税を電源三法でばらまいて、不公平なテコ入れをしているわけではない。「原発の電力コストは安い」と言うが、これらの補助金をコストに参入すると、火力発電を上回る。自己のリスク費用を国が負担するという法律を作ってようやく日本とアメリカの原発が実施されているにすぎない。
経済界と霞が関の官僚組織がどうしてもやりたいというなら、事故時の補償費用も自己責任でやればよい。
注1.「強弁と楽観で作り上げた『原発安価神話』のウソ」『週刊東洋経済』2011.6.11、P.47
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プラント技術者の会 より
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3-1 化学プラントからみた原発
http://www43.tok2.com/home/plantengineer/p3/3-1-01.pdf
シリーズ 化学プラントから見た原発 その1